摂食障害回復後の心身の不一致感に対し、ヨーガ療法技法による身体感覚の意識化が奏功した一事例

 ○米澤紗智江12、鎌田穣3、古市佳也2

1)兵庫教育大学大学院学校教育研究科 2)西宮ヨーガ療法研究センター 3)黒川内科

【目的】摂食障害(以下、ED)は、症状回復後も様々な精神的肉体的困難さが解消されないまま経過するケースが少なくない。この度、ED回復後数年経過し、心身の不一致感を主訴とした事例にヨーガ療法技法による介入を行った結果、奏功した事例を経験したので、ここに報告する。

【事例紹介】48歳、女性。既往歴は神経性大食症(BN-P)で、16歳時にダイエットをきっかけに過食嘔吐が出現し、40歳代で消失。以前、心療内科受診、カウンセリングを継続していたが現在は共に行っていない。

【方法】X1月より、ヨーガ療法専門通所施設にて1/週、90分の個別セッションを行った。プログラムは座法・呼吸法。「体を感じ、体と共に生きていることを実感したい」という本人の希望に合わせて、繰り返し“今・ここ”の身体感覚への意識化を促した。また、セッションでの体験をフィードバックする目的で簡単なカウンセリングを行った。

【経過及び結果】初回セッション時、身体感覚への気づきを語り、その後セッションを重ねる毎に深化した様子。11セッション目には「体と心はくっついていて、一緒のほうが心地いい」と語った。X1月と3月に行った評価によると、POMST得点%)ではT-A5041D6648A-H5142V5348F4738C4940。失体感症スケール(点)では、体感同定困難:2616、過剰適応:2021、健康管理の欠如:2415Total705260点以上は高度の失体感傾向)。自覚症状については、以下の諸症状が改善した(10点満点)。冷え:812、頭痛74

【考察】繰り返し身体感覚を意識化する作業が、結果として心身の不一致感を減少させ、自覚症状や気分状態、失体感傾向において改善がもたらされたと考える。従って、本事例において、ヨーガ療法での介入は有効に働きかけたといえるであろう。